ひのきの家に住んでみて。 お客様の暮らし

「祖父の想いを現在につなぐ 築95年の“古民家スペース”」

INTERVIEW 24

  • 建築場所/埼玉県川口市

おじいさまが昭和4年に建てたご実家をリノベーションした内田充昭さま。
ノスタルジックな趣きを大切にしてリノベーションされた家屋は、地域の人々に開かれた“古民家スペース”として、新たな楽しみを発信しています。

二間をつなげると22畳の広さになる1階の和室。音楽イベントや落語の寄席の会場として活用されている。既存の天井や鴨居を活かしつつ、アンティークオークションで手に入れたふすまや障子を組み合わせた。

昭和初期の姿を現在によみがえらせるために

江戸時代に日光街道の宿場町として栄えた鳩ヶ谷。のどかな雰囲気が漂う住宅街を歩いていると、木々に囲まれた立派な日本家屋が見えてきます。こちらは、2024年10月にオープンした「TsuKuRuBa 竹蔵」。イベントスペースであり、アートギャラリーであり、コーヒースタンドでありと、多彩な顔を持つ“古民家スペース”です。
「ここは、私の祖父である内田竹蔵が昭和4年に建てた家なんです」と話すのは、オーナーの内田充昭さま。「竹蔵は医師として多くの人命を救った人物で、当時は彼を慕う地域の人々が家に集い、にぎやかな雰囲気だったと聞いています」と続けます。竹蔵氏が昭和12年に亡くなったあとは、ご両親がこの家を引き継ぎ、内田さまたちきょうだいもたくさんの思い出を紡ぎながら過ごしてきました。「きょうだいがみんな家を出て両親が亡くなってから、10年間ほど空き家になって荒廃が進んでいました。ですが、私はこの家が大好きなので、竹蔵が暮らしていた頃の姿を蘇らせ、地域の人々が再び集う場所にしたいと思うようになったのです」。
もりぞうとの出会いは、お付き合いのあった不動産会社からの紹介でした。営業担当としてこのプロジェクトを統括したもりぞうの佐藤秀人さんは、「内田さまの地域への想いを伺い、絶対に成功させようと身が引き締まる思いでした」と振り返ります。また、改修作業を担った大工の太田侑介さんは、古民家修復のスペシャリスト。「自分も古民家が大好きなので、『この雰囲気を残したい』という内田さまの想いに共感し、できる限りのことをしようと決意しました」と話します。一方の内田さまは、近所でもりぞうが施工中だった現場を見学。「素晴らしい材を使っていること、木の扱いに長けていることを実感でき、もりぞうさんなら安心して任せられると思いました」と教えてくださいました。

家の顔である玄関には新たに神棚をつくり、厳かな雰囲気に。

人と人をつなぎ、楽しさを発信する場所に

「以前の様子を見たらびっくりすると思いますよ」と微笑む内田さま。リノベーション前の建物は老朽化が進み、床が傾いたり抜けたりしていたそうです。そこで大工の太田さんは、まず構造材を全て確認。劣化が激しかった土台や柱を入れ替え、十分な強度を確保しました。また、従来の伝統的な間取りはなるべく残しつつ、カフェメニューをつくるキッチン、個室貸しのアトリエ、広々としたトイレなどを新たにつくり、人々を迎え入れる準備をしました。そして、竹蔵氏の時代に女中さんが食事の支度をしていた「井戸小屋」は、全面リノベーションしてギャラリーに。地域のアーティストが作品を発表できる舞台を整えました。
なお、リノベーションにあたって内田さまともりぞうが共有していた理念は、「残せるものは残すこと」と「今風の新建材は使わず古民家に馴染む素材で仕上げること」。既存の建具は一つひとつ丁寧に洗浄・研磨・リメイクして、できるだけ活用しました。さらに、古民家の雰囲気を盛り上げるため、内田さまはアンティークの建具や照明を厳選して新たに購入。太田さんにお願いして、うまくおさめてもらったそうです。
そして、1年以上の期間をかけてよみがえった「TsuKuRuBa 竹蔵」。内田さまは、「古民家好きの方が遠方から来てくださったり、赤ちゃんを連れたお母さんが一息ついていかれたり、思い思いに過ごしていただいています。近所の幼い兄弟は、毎日のように来て自分の家のようにくつろいでいますよ」と目を細めます。伝統的な日本家屋を初めて見るお子さんも多く、畳ではスリッパを脱ぐこと、無垢の木が飴色に変色することなどを、学ぶ場にもなっているそうです。「落語の寄席、ジャズライブ、絵本を読む会など、さまざまなイベントにも活用いただいています。竹蔵が残したこの家がこれからも地域に愛され、人と人をつなぎ、笑顔を創出する場所になってくれれば何よりです」。


階段下のロビーには、竹蔵氏の時代からある書物や置き物を飾り、この家の歴史を紹介している。右奥は、竹蔵氏が使っていた薬棚。

 

最後までご覧いただきありがとうございました。

動画にて自宅紹介を行っております。
是非、ご覧ください。

(TsuKuRuBa 竹蔵)
住所:埼玉県川口市鳩ヶ谷本町2-8-24
ホームページ:https://www.tsukurubatakezo.com
メールアドレス:info@tsukurubatakezo.com
インスタグラム:@tsukuruba_takezo
営業時間:月・木・金 10:30〜18:00 / 土・日・祝 10:00〜18:00 ※館内入場は17:00まで
定休日:火曜、水曜、他不定休あり
入館:無料

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